聞くチャンネル インタビュー

「感謝の心」が成長の源。「頼んで良かった」と言われる建物づくり目標

株式会社オオバ工務店 浦川千恵さん

【プロフィール】1978年生まれ。郡山市出身。県立郡山北工業高校建築科を卒業後、1996年にオオバ工務店初の女性技術者として入社、工事部に配属され、今年で25年目を迎える。現在は営業部次長・システム管理部兼務。高校時代は生徒会長も務め、統率力や指導力などリーダーシップは折り紙付き。1級建築施工管理技士、2級建築士、危険物取扱者、解体工事監理技術者など現場責任者として必要な資格はほぼ取得。休日は、同じ職場で働くご主人とリフレッシュと勉強を兼ねて、京都や金沢などの街並み散策を楽しんでいる。

恩師のアドバイスで建築技術者に

―建設業界に興味を持ったきっかけは

 中学、高校時代の恩師の影響が大きかったです。中学3年で進路を決めるときは、技術の先生に「建築の仕事が向いている」とアドバイスされました。建築に興味や夢があったというより、どちらかといえば「何となく」郡山北工業高校の建築科に進みました。高校の担任は内藤陸朗先生でした。初めて受けた建築の授業が楽しくて楽しくて。どちらかというと製図より実技が面白かったですね。今度は内藤先生に「設計よりも現場」と言われてオオバ工務店に入社することになりました。実は女性技術者としての採用第1号でした。建設業の現場は「強面(こわもて)の怖い男たち」のイメージがあると思いますが、実際に現場に入ると、みんな優しくて。初めての女性技術者だったので、それなりに気を使ってくれていたのかもしれませんね。ミスをしたら職人さんたちに叱られましたが、怒られているというよりも教えてくれているという感じでした。今思うと感謝の気持ちしかありません。

 両親の実家が建築に携わり、小さい頃は両親に連れられて現場に行ったりもしていました。建築の仕事に就いたのは、やはり血筋なのかもしれません(笑)。

―1日の仕事のスケジュールを教えてください

 日によっても違いますが、現場を持っているときは朝、現場に行って進捗状況を確認して工程や施工、品質、安全管理などの打ち合わせ。お客様から電話をいただいたときは、現地を見に行って、見積もりをしています。各現場によってもスケジュールは違いますが、早め早めの段取りを心がけています。

顧客が生活で感じた家の良さ。喜びのことばが励みに

―どんな時に仕事にやりがいを感じますか

 やはりお客様に喜んでいただいたときです。お客様の笑顔を見るとこちらも嬉しくなります。建設業で働く皆さんが言われるように、お客様の夢や思いを、多くの職人さんたちと力を合わせて造り上げていく。そして携わった建物が後世に残ることは大きな魅力です。でも私は、どちらかというと完成直後より、定期的にアフターメンテナンスでお客様と再会して、お客様がその建物で新しい生活をスタートし、日々の生活の中で感じたことから感謝の言葉をかけていただいたときの方が嬉しい。仕上げ材や水回りなど初期投資が掛かっても、将来、必ず返ってくると説得して「浦川さんのおかげです」と言っていただいたときは、もう最高ですね。

―休日の過ごし方は

 平日は一緒にいる機会が少ないので、勉強と気分転換を兼ねて主人と2人でドライブを楽しんでいます。京都や金沢など街並みを散歩すると気持ちがリフレッシュしますね。コロナ禍が落ち着いたら伊勢神宮に行ってみたいです。木造もいいですがデザイン性が魅力のRC建造物も好きです。主人も現場監理者で、著名な建築家が手掛けた美術館や図書館などを回るのですが、どうしても施工側の立場で見てしまって、例えば「コンクリートの打設はあーだ、こーだ」と言い合いになるのも、それはそれで面白いし、勉強にもなります。

-会社で女性活躍を推進している取り組みがあれば教えてください。

 当社には令和3年度入社(1人)の若手を含め技術系5人、営業系2人、事務系4人の女性社員がおります。私の入社時と比べて、女性のために職場環境の改善が進んだかと言うと、あまり変わっていません。それは悪い意味ではなく、当時から男女関係なく、子育てや家族のための休日もきちんと取得できました。会長や社長の方針なのでしょうが、仕事についても女性だからといって特別扱いせず、公共工事の現場代理人も任せてもらえる。男女平等が徹底しているので、ストレスを感じることはほぼありません。世代や業務内容の違う社員たちがコミュニケーションをとって、職場環境をもっと良くしようと取り組んでいます。社内も現場も明るく、男女関係なく、ずっと働いていたい会社だと思います。

職人さんの技術・技能継承が課題。生き生き働ける環境が必要

-今後の目標について教えてください

 仕事面では、クレームのない建物を造りたい。最近の建物はますます複雑化し、芸術性と機能性が求められています。施工者にとっては頭が痛い問題ですが、お客さまと設計士の間に立って予算内で最高の建物に仕上げるため、譲れるところ、譲れないところをうまく調整して、何年経っても「この会社に頼んで良かった」と言われる建物を造っていきたい。

 もう一つは職人さんの高齢化がものすごいスピードで進んでいて、外国人技能実習生も増えていますので、建築現場で必要となる技術や技能の継承が不安です。若い職人さんが生き生きと、気持ちも体も元気で働けるような職場環境をつくっていかなければと考えています。

 私生活では、後悔のない人生を送るため「やりたいことは、すぐにやる」をモットーに毎日の生活を送りたい。野菜は取れたてを食べる。お酒もお料理も美食を心がけて、美味しいものを健康なうちに片っ端から味わいたいと思っています(笑)。

―好きな言葉は

 「感謝」です。仕事で出会う人。お客様、建築士の先生、職人さんや納入業者の皆さん。職人さんたちに怒られることもありますが「教えてもらっている」と感謝の気持ちを持つように心がけています。感謝の心を持つことが人間としての出発点で、成長していく上で最も大切なものだと思っています。

―建設業を目指している皆さんへメッセージをお願いします。

 若い時しかできないこともあるので、失敗しても良いから今、自分がやりたいことをやり遂げてみる。その先に建設業という仕事を見つけてくれれば嬉しいですね。業界全体でも若い世代の離職率が高いことを皆さん知っていると思うので、失敗して先輩に怒られたからと言って簡単に答えを出さない。失敗するのは当たり前のことなんだと割り切れば、楽な気持ちになれるのかなと思っています。

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