聞くチャンネル インタビュー

「社員が働き続けられる環境づくり」が会社の責務

福島県南土建工業株式会社 小野喜治さん

1986年生まれ、白河市出身。獨協大学経済学部卒。2010年、福島県に基盤を置く第一地方銀行に入行。県内各支店勤務を経て、本店法人営業部で法人向けの経営課題提案型営業の企画運営に従事した。2020年4月、福島県南土建工業株式会社に入社。現在は取締役総務部長を務める。父は社長の小野利廣氏。休日は子どもを連れて公園巡り。趣味は温泉巡りで、三島町の早戸温泉つるの湯や金山町玉梨温泉のせせらぎ荘がお薦めだとか。最近は白河商工会議所青年部(YEG)や西郷村商工会青年部の活動にも尽力している。

他業種での経験、家業に生かし地域にも貢献

-建設業界に興味を持ったきっかけを教えてください

将来を考える上で、家業でもある建設業は選択肢に挙がっていましたが、さまざまな世界を見たいという気持ちもありました。金融を通じて少しずつ変化する街に関わりたい、より良い方向に進む力添えをしたいという思いがあり、銀行に就職しました。入行して1年目に東日本大震災が発生しました。着の身着のままで避難した方々や、被災や原発の問題から事業継続が困難な企業もいる大変な状況でしたが、そうした企業や個人を支援することはやりがいを感じました。その後、相続や事業継承問題にも関わるようになり、様々な業界で後継者がいないことによる「廃業」や「技術の断絶」などの現実を目の当たりにして、家業に戻ることを考えるようになりました。

建設業界は高齢化が問題となっています。建設業は道路、河川等の維持管理や災害時の初動対応など「危機管理産業」としての役割も担っていますが、このまま10年が経ち、現在高齢の従業員が退職したとき、地域を守り続けていくことは難しくなります。集落と集落の間が離れ、冬期の積雪も多い奥会津付近に住んでいた頃、インフラの整備・維持管理がしっかり行われないと、地域が廃れてしまうのではないかと不安を強く感じました。営業回りをするうちに、その感覚は大きくなり、自分の経験を建設業で生かすことで、地域に貢献できるのではないかと思いました。


-普段の業務内容を教えてください

最も力を入れているのは若年層の求人です。当社の従業員は高齢化が進んでおり、担い手の確保は喫緊の課題ですが、入職希望者が本当に少ないと実感しています。私は主に人事や銀行時代の経験を生かして決算対策などを行い、経営に関わっております。
人事戦略の一環でもありますが、健康経営優良法人認定等にも力を注いでいます。社内での運動機会の提供や、健康状態の把握、長時間労働に向けた対策など、社員に長く働いてもらう環境づくりが重要と感じています。この環境づくりが若い方の入職や、会社のイメージアップにつながると考え認定の更新ができるよう注力しています。
現場代理人全員に「熱中症予防声掛けプロジェクト」(後援=環境省、協力=大塚製薬)が主催している熱中症アドバイザーの資格を取得してもらいました。社内に設置した自動販売機をより健康に良い物に変更し、栄養補助食品や低GI食品なども加えました。除雪などの夜間作業前や、小腹のすいた時にも便利です。社員が健康に気を付けるきっかけとなればいいと思っています。
平均寿命を考えると、65歳で退職してから20年以上、生活していかなければなりません。従業員の今後の生活を考えたとき、無理でなければ定年後も勤務を続け、より長い期間活躍してもらい、地域の人手不足解消、インフラ整備に力を貸してほしいと願っています。本人が希望すれば、働き続けることができる環境をつくるというのも会社の責務だと考えています。


「4週8休」実践、効率的な時間の使い方を意識

-建設業は休日の確保も課題となっています。「4週8休」にどのように取り組んでいますか

当社では、日曜を法定休日とし、残りを変動労働時間制で年間カレンダーを作り、それに沿って休日としています。4週8休は、当社が合併(福島県南土建工業、共栄建設、小野組の3社)した平成10年(1998年)には、すでに採用されていたようです。社長が国や県の取り組みに敏感だったことが大きいと思います。そのため、4週8休は社内にだいぶ浸透しています。土曜日の出勤は月に1、2回ありますが、現在の休日の形態は、身体的にも楽だと感じます。これからの時代、家族との時間はもちろん、育児介護の問題も出てきますから、休日の確保は必要だと考えています。

-4週8休のメリット、デメリットはどう考えていますか

求人に掲載する「先輩の声」を集める際に、若手社員から聞いた話ですが、その社員は子どもの頃、夏休みの宿題を後回しにするような性格だったそうです。ところが、社会人になって4週8休で働くようになり、時間が足りないと感じることも増え、時間を有効に活用する重要性に気付いたそうです。今では、段取りを重視し、効率などを考えて仕事をするようになったようです。私自身も時間を大切にするという考え方です。銀行時代は遅くとも午後7時に帰るのが当たり前でしたので、「やるべきことを、いかに終わらせるか」を考えるのが当然の感覚になっていたこともあるかもしれません。
もちろん、自分の時間や家族との時間を取れることもメリットです。私が知っている範囲では、休日に海釣りや公園散策、ゴルフを楽しむ社員もいます。やはり、4週8休を導入していない会社と比べると、自由な時間を取りやすい環境なのかもしれません。
一方で、当社は4週8休に取り組んでいますが、一緒に現場で働く下請企業や協力会社の皆さんが同じ取り組みをしているとは限りません。特に現場を早く回したいなどの考えから、土・日曜日も働きたいという方もいらっしゃいます。4週8休は、他社との兼ね合いが必要になるというのが難しいところです。
また、どうしても休日数が多いことで時間外労働が増えてしまう社員がいます。それでも社内平均の残業時間は減少傾向ですので、効率化が堅調に進んでいると思っています。ベテランが多いこともあり、若手をうまくサポートしながら仕事を進めています。
4週8休の取り組みを急に始めるのは難しいかもしれません。昨年までの当社の年間休日は105日ですが、いきなり120日に増やそうと思っても、急にはなかなかできないと思います。ただ社長からは、休日をさらに増やすことはできないかと要望がありました。今年から昨年より休日を1日増やすなど、模索しているところです。

建設業は「誇れる仕事」、新3Kの実現目指す

-建設業への入職を検討している方へひと言お願いします

建設業の魅力の一つとして「後世に残る建物や道路をつくることができる」ことが挙げられます。社員も「家族に自慢できる、誇れる仕事」と言っています。自然災害等が起きれば、危機管理産業として必要になりますし、強い使命感を持ってできる、やりがいのある仕事です。昔の「3K(汚い・きつい・危険)」のイメージから、「新3K(給料が良い・休日が取れる・希望が持てる)」の実現に向けて、本気で取り組みを考え、動いています。興味のある方は、経験、学科を問わず、ぜひ、ご検討いただければと思います。
例えば、給料の伸び率は、3交代労働の工場勤務と比べ、建設業の方が勝っています。また、発注者、協力会社、近隣住民と多くの方々と打合せや交渉を行うことから、同世代に比べ、交渉力や人間力がつき、自己成長につながると感じています。
当社では、県立白河実業高校など地元からの入職者が多いのですが、白河市は大規模工場が多いこともあり、人材の確保が厳しいのが現状です。最近では、キャリア教育の一環として、白河実業高校の生徒の産業現場実習(1週間)を受け入れています。実際の仕事とまではいきませんが、建設業の紹介や測量体験、社員から仕事について話を聞く機会などを通して、スコップとシャベルを使う前時代の建設業のイメージを払拭し、建設業での働きがいを感じてもらえればと思っています。実習に来た生徒が建設業に就くとは限りませんが、地域貢献の一環として、進路を決める上でさまざまな職業を見る機会になればといいと考えています。

-SDGsにも積極的に取り組んでいます

当社は、2022年6月27日にSDGs宣言書を策定しました。宣言書に盛り込む「人権・労働」のカテゴリは、ワークライフバランスと人材育成をテーマにしました。特に人材育成では、社員だけでなく地域の学生への教育や、社長のライフワークでもある公益財団法人の活動などを通して、人づくりを行い、まちづくりにつなげていきたいと考えています。事業継続に向けては、生活インフラ整備を通じて、緊急時にも地域を守ることができるよう体制を整えています。品質も高品質を目指しています。当社は2023年7月に創立120周年を迎えます。それまで、培ってきたノウハウや技術の継承について考えていかなければなりません。

社員一人一人が活躍できる職場に

-好きな言葉を教えてください

「一隅(いちぐう)を照らす」です。前職の銀行の入行式で当時の頭取が、新入行員に贈った言葉で、「どんな所にいたとしても、一人一人が自らの周りを照らしていけば、自ずと社会全体が明るくなる」という意味です。一人でできることは決まっていますが、一人ひとりが今いる場所を支えていくことで社会全体が輝くという言葉だと私は捉えています。社員一人一人が活躍できるよう環境を整備するというのが、今の職場での私の一隅として輝くべき場所だと思います。


-白河市の魅力を教えてください

個人的には「住みやすさ」が魅力だと感じています。関東圏に近く、ショッピングセンターも近隣にあり、生活する上で困りません。南湖、小峰城のほか、夏の甲子園でも話題になった白河の関など、歴史に触れながら暮らせることも魅力です。
私はダルマが好きで、民芸品のかわいらしさに触れ合えるのもいいですね。いろいろな種類があり、例えば寅のダルマだったり、赤べこを模したダルマだったり、最近ではアニメ作品とコラボしたダルマなど多岐にわたっています。
大学は埼玉だったのですが、地元に戻り良さを感じることもあります。何よりご飯がおいしい。自然との触れ合いもあり、少し歩けば田んぼが見え、気持ちにゆとりを持てます。人ごみの中ではゆっくりできない性格なので、比較的人のいない所でのんびり過ごせるのはいいですね。

福島県建設業協会のinstagram

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